コラム@ 〜子どもの誉め方・叱り方〜

 最近子育てに関する番組や書籍が多く見かけます。私の周りでも子育てに対する高い関心をお持ちの方が多くいらっしゃいます。それだけ子どもに対する想いや期待、不安などもあるのかなと思います。
 私は、10万人以上の子どもやその保護者を見てきたり(この数字が多いのか少ないのかは分かりませんが)、実際に子どもを持つ親としての想いだったり、指導者になるために習ったことや専門家から教わったことを元に、私自身の想いを記したいと思います。
 私は子どもには「輝いて欲しい!」と常々想っております。何か壁にぶち当たっても、前向きに乗り越えたり、いつも幸せで笑顔でいてくれたらと思います。恐らく世の保護者は皆そう想っていると思います。
 また、子どもには大きな大きな可能性があるということを何度も痛感致しました。ちょっとした言葉掛けで大きく飛躍したり、できなかったことが急にできるようになったり、いつも子どもの可能性には脱帽させられます。やんちゃで周りの子の保護者からクレームが絶えなかった子も、ちょっとした切っ掛けでみんなのリーダーになったりした子もいてました。大人が考えているより色々な可能性を秘めていて、できない事なんて無いと思います。勿論超一流になるには才能やセンスが必要かもしれませんが、「鈍くさいなぁ」と言われ続けていた子が指導者が替わったとたんに選手にまでなった子は何度も見てきました。運動に関して言えば、出来ないのは数センチもしくは数ミリ軸がずれているか、動いたり力を入れたりする方向が違っているか、力を出しにくいもしくは動きにくい姿勢を取っているかのどれかです。鈍くさいからや両親が運動が苦手だから出来ない、覚えが悪いことは決してありません。
 話は変わって誉め方叱り方なのですが、そこに触れる前に先ずは人間について少し触れたいと思います。人間には本来「快・不快」しかない感情から色々な経験を得て複雑な感情を持つらしいです。赤ちゃんのお腹が空いたから、おしめが濡れて気持ち悪いから泣く→不快とオッパイをもらった時やあやしてもらった時→快から始まり大きくなるにつれて色々な環境も変わり、さまざまな感情(葛藤など)を持つのですが、元を正せば快か不快かの様です。
 そこで、マウスを使った実験があるのですが、T字路をつくり突き当たりをマウスが左側に曲がるようにするにはというものです。最初は左側にマウスの好きな餌を置きました。そうするとマウスは左側に曲がるようになりました。快を与えた事による効果の表れですね。次に右側に電流を流すものでした。右側に嫌な電流を流したのだから左側に行くだろうと思ったのですが、違ったようです。マウスは立ち止まったり、塀を乗り越えて飛び降りたりしたそうです。(私が実際行った実験でも無いので確かなことは言えないのですが)前もって○○したら罰がありますと言う場合の罰には有効なのですが、前置きなしに○○したから罰(怒鳴るなど)をすると人はフリーズ(思考などが停止するなど)を起こしたり、不可解な行動を起こすようです。最近流行りの行動変容やコーチングも砕けた言い方をすれば、いかに快(幸せ)な方向に導くかと言うことのようです。
 では、何が何でも誉めた方が良いのでしょうか?先に述べたとおり人は快に行動し不快を避ける性質があります。なので、誉め方によっては子どもを思わぬ方向に導くこともあります。良くある光景なのですが、「○○できなね、すごいね!」と誉める事があります。実は大きな落とし穴だったりもします。「えっ、何が?」と思う方も多いと思いますが、できた→誉めるになると、できたから誉められる(快)という方程式ができあがり、できないは誉められない、更には○○はできるのに□□はできないのかといった表情などを保護者や指導者や友達がすると、そこには不快が生じ、避けるようになります。そうするとできないこと(できないと思っていること)はやらない、やりたくないというようになってしまいます。マウスの実験にもあったフリーズと同じでように。
 ではどう誉めたらよいのでしょう?私の勝手な思いや経験からですが、できる前のプロセス(そこに至るまで)を含めて誉めてあげたらと思います。チャレンジしてできたから、そのチャレンジした事を含めて出来たことを誉める。頑張って出来たから、頑張ったことを含めて誉める。工夫して出来たから、工夫したことを含めて誉めるなど・・・。勿論出来なくてもやったことに誉めてあげることはとても良いことです。出来るためのアドバイスをプラスしたら尚のことGOODです。
 また、誉め方ですが小さい頃は大げさに誉めてあげたら良いと思います。しかし、小学校中学年ぐらいからはその子によって大げさに誉めたり、ボソッと誉めたりすることをお薦めします。それは、その子を見てあげたらなんとなく分かると思います。
 次に叱り方ですが、これは誉めるのに対して少し難しいようにも思えます。先ず「○○したらダメ」は叱り方は効果があったケースをあまり見たことがありません。○○したらダメと言われたらしたくなったりもしますし、思考が止まることもあるようです。それよりは「○○しようね」、例えば「走ったらダメ」でなく「歩こうね」だったり、「壁に落書きはダメ」でなく「お絵かきはこの紙にしようね」と言う方が子どもは素直に聞いてくれることが多いです。それでも効果がない時は、二者択一で子どもに選ばせてあげると効果的です。例えば先の例で行くと「ここは床が滑るから走ると転んでケガをするよ、走って転んで痛い痛いになっちゃうのと歩いていくのとどっちがいい?」や「壁にお絵かきしちゃったら、後で壁綺麗綺麗にできる?綺麗綺麗にできるまで遊びに行けないし、おやつも食べられないよ、壁にお絵かきするのとこの紙にお絵かきするのとどっちがいい?」などです。いかに快に持っていくかがポイントになります。
 また、何か悪いことをしたら「ダメでしょう!」からでなく「どうしたの?」から聴いてあげたらより効果的です。その中で、それは○○じゃないかな?と問いかけてあげると子どもは納得して素直にきいてくれます。
 また、子ども達の中には、ものを投げたり大声を出したり誰かを叩くとお母さんが(どうしたんだろう、愛情が足りなかったかなと思って)抱きしめてくれるから、大声を出したりすることもあるようです。やはり、見る・聴くが先ずは大切のように思います。
 後は私事ですが、私も子どもの頃はよく怒鳴られたり叩かれたりして育てられました。でも、前向きに明るく生きて(活きて)おります(自分で言うのもなんですが)し両親に感謝もしています。よく両親からは「今やったら虐待と通報されるな(笑)」とか「変な風にならなくて良かった(笑)」と冗談混じりに言われますが、真剣に叱ってくれたし、真剣に見てくれていたし、真剣に聴いてくれていたし、誉めるところは誉めてくれていたので、大丈夫とさほど不安も無かったと思います。
 子どもを育てるということはコツを掴めば単純なものだと思います。しかしとてもとても奥が深いと思います。1人でも多くの子ども達が光り輝いてくれたらと心から願っています。

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